50代女性のCさんは、男の子2人のお母さんです。主な悩みは仕事が続かず、転職回数が多いことでした。
これまで業種や雇用形態を変えながら何度も転職してきたけど、年齢のこともあり求人も限られてくるので、長く続けられる働き方を模索していました。
ところが、自分のなかの相反する性質に振り回され、ときには生きることも終わらせたいと思うくらい、落ち込んでしまうこともあります。
お話を聞いていくと、幼少期に無理やり学校に通わせられた経験など、本来の性質を押し殺しながら過ごしてきたことが、どんどん判明していきました。
周りに適応するために、本当に頑張って生きてきたんだなぁと、エピソードが出てくるたびに胸が締め付けられる思いがしたのを覚えています。
Cさんが初めて相談に来た日から約半年間。合計5回のセッションを重ね、「どういう訳か自分を責めることが、めっきり減りました。」と教えてくれたので。
ケーススタディとしてエピソードを拝借して、変化の分析をしていこうと思います。
仕事を続けたいけど色んな業界を試したい
相談で多いテーマで「仕事が続かない」というのがあるんですが、一方で「ひとつに絞りたくない」という気持ちも持っているんですよね。
一通り経験できたら新しい分野に興味が湧いて、チャレンジできる可能性があるなら飛び込んじゃう。
なかには一般企業に就職するのが難しくて悩んでいる人もいるけど。
Cさんのように、面接は受かるし、たいていの職場で高評価ももらえる。むしろ飲み込みが早くて、新人なのにベテラン扱いされることが多い人もいるんですね。
で、頑張り屋さんだから、いつのまにか仕事量が多くなって体力・気力が削られていくパターン。
ひとつに絞るのがもったいない
好奇心旺盛というキーワードは、HSS型HSPだけじゃなく、HSP非HSSでも持つ感覚です。
Cさんは非HSSの可能性が高いですが、MBTIでタイプを紐解いていくと、好奇心の背景が見えてきました。
情報収集するときに未来の可能性に意識が向きやすく「こう来たら次はこうかな?」と先読みしながら考えが展開され、閃きを自分のなかで整えてからアウトプットするのが、自然な心のエネルギーの使い方の人でした。
Cさんにとって、世の中に無数にある求人情報は、可能性の宝庫なわけです。
進みながら可能性を広げていくのが本来の心の使い方なので、ひとつに絞るのはもったいなく感じるんですよね。
こうして言葉で心の動きが把握できるのも、タイプを知るメリットのひとつです。

職場の人と何か違う、というのはわかっていたけど。なぜ違うのか、どうしたらいいか、わかりませんでした。タイプの説明を読むと、そうそう!これ!となりました。
無理やり学校に行かされたトラウマ
好奇心旺盛で転職回数が多くても、それ自体を楽しめる人もいます。
とくにSNSを見ていると、色んな経験をしていることを強調して目立っている人もいますよね。
Cさんも同じように、社会人になってから何度も転職をくり返しているんですが、自分のことが好きになれませんでした。そればかりか、人生を終わりにしたいくらい落ち込んでしまう。
いったんネガティブが襲ってくると、頭のなかに声がグルグルとこびりついて、薬を飲まないと寝られないくらい。「消えちゃいたい」と思うことも何度もありました。
セッションでこの話が出てきたとき、生きづらさの核になる部分だろうなと感じたので。
詳しく聞いてみたところ、幼稚園のころから無理やり集団に放り込まれた経験をしていたことがわかりました。
時代背景の影響
過去にも、50代の方で「仕事が続かない」と悩んでいる人が、同じように小さいころ集団に溶け込めないことを大人に指摘され、無理やり矯正された経験を話してくれたんですよね。
時代背景が影響しているのだと思います。
いまは不登校も、ひとつの選択肢として考えられるようになったけど。
ある時代では「学校に行くことが全て」という価値観が常識だったし、いま以上に友達と積極的に話せないことを問題視される風潮でしたよね。
本当は一人でいたいし、人間に対して違和感を持っているけど、その感覚を受け入れてもらえず、むしろ否定された経験がトラウマになってしまう。
得体の知れない世界に放り込まれる恐怖
この経験って直視するのが本当にツライ記憶でもあるんですよね。
だって、すごく怖かったと思うんですよ。
得体のしれない世界に放り出されて、頼りにしていた大人にも「そんなんじゃダメだ」と言われて、どうしたらいいかわからない。
そんな恐怖のなかで、どうにか集団生活を送れるように対策を身につけるわけです。
それが相手の顔色を伺って、相手が差し出したものを受け入れて、自分の気持ちを押し殺して、ひといちばい頑張るという対策。
おっと、これは私の解釈がだいぶ入ってしまいましたが。
でもHSP気質やエンパス体質を持つ人にとって、相手の望みを吸収して体現「できちゃう」ので。表面上は環境に適応しているかのように見えるんですよね。



うるさく言われるのは嫌いなんです。本当は一匹狼でいたいタイプ。職場のくだらない人間関係に巻き込まれるのがイヤ。
自分が望んでいる仕事を選んでいるようで、実は周りの権威者(もしくは心のなかで作った権威的存在の人)が肯定してくれそうな選択をしている可能性も高いんですよね。
「私にできるのは、これくらいだよね」って自然に見切りをつけてる。
本当に望んでいること
Cさんとの話のなかで、ひとつ気になったのが「自分の気持ちを話す量が極端に少ない」ということです。
これも私の予測だけど、本当に小さいころから素直な感覚を表現しても、受け入れてもらえない経験をくり返していたのかなぁと思いました。
そもそも集団に対して、多くの人が口にしないような感覚も持っているかもしれません。



自分のなかに答えを取りにいこうとすると、頭が真っ白になります
そんなCさんも、実はセッションのなかで望んでいることを話しているんですね。
飲食店で働いている彼女は、美味しいものを美味しい状態で提供できることに喜びを感じていました。
お客様を待たせないように、ホールとキッチンの状況を常に意識しながら、目の前の仕事に集中するときにやりがいを感じる。
「本当は認めてほしい人に認められたら、それでいいと思ってる。」ということも、教えてくれました。(本人は、そこの気持ちもスルーしているだろうけどね)
人と交流したいけど疲れる
Cさんは最初にセッションに来たときから、人と交流するのが好きだけど、ひとりの時間も必要だと話してました。
大勢でワイワイしていると急に孤独を感じることもある。
うしろで人が話していると、振り返るタイミングを考えて体を動かすのを躊躇してしまうこともあるそう。
人が嫌いなわけじゃなく、むしろ交流したい。だけど同時に寂しさも感じるし、ものすごく疲れることもある。
こうした現象も、相談ではよく話に上がります。
相反する葛藤を扱うには、どんな人と、どれくらい、どうやって関わりたいのか?という境界線(バウンダリー)を作るとバランスの取れた選択が取れるようになります。
どういう訳か自分を責めることが、めっきり減りました
今回はカラーセラピーやMBTIを使用したり、ナラティヴ・セラピーの会話を通して、Cさんの感覚が広く深く語られるように進めていきました。
全体を通して私の方から「こうしていきましょう」という行動面で指定することはなく、ただ自己観察を促進するようサポートをしていったんですね。
なので、Cさんの感想で「どういう訳か」という言葉を見て、そうなんだよね~と一人で勝手に納得しちゃいました。



どういう訳か最近は自分を責めることが、めっきり減りました。好きだなあという気持ちを大事にできていると思います
体力を消耗しやすいのに動いて自分を追い込む人
とくにHSP気質やエンパス体質の人は、そもそも体力を消耗しやすいし、行動を変えるというのがすごく負担になる人たちです。
それにも関わらず、動けない自分を責めて、パニックになるほど行動に逃げがちだから。
行動面でのアクションを必要とせず、じっくり自分の感覚を味わって、境界線を作っていくという自己理解の方法が合っているんだと思います。
もちろん感覚を味わうというのは、昔の恐怖や不安を再体験することも避けては通れない部分ですが。
それ自体も、何かを改善しようと努力したわけでもなく、だれかを敵にするわけでもなく、自分が何を考えて、どう思っていたのか受けとめる。
こうして体感を増やしていくと、幸せキャッチセンサーのスイッチが入るので、どういう訳か自分責めが減るんですね。



今まで自分について、自分の気持ちについて、思ったより考えていなかったんだなぁと、わかりました。
よっぽど相手の「正解」ばかり探して安心していたようです。
うまく表現できないものを、ももかさんが形にして下さいました。それを何回かするうちに
「あーこれでいいのかあ」⇒どれもこれも私で、自分の感じたことを自分の言葉で表現してよいのだ⇒自分の感覚を信じていいのかなぁ
となっていったかな?と思います。
さいごに
きっと今までにない体験だったと思います。
混乱した部分、不安になった部分もあったと思います。それでも少しずつ言語化の量が増えていることを、私は気づいていました。
仕事だけでなく、Cさんが自分を大切にして過ごせますように。
エピソードの提供、そしてセッションに来てくれて、本当にありがとうございました。