こんにちは、ももかです。@momohsphss
ナラティヴ・セラピーに取り組み始めて、約1年ほど経ちました。経験と勉強を積み重ねているけど、奥深さに圧倒される日々です。
日本では比較的新しいナラティヴ・セラピーは、耳慣れない人も多いと思います。
そこで、私自身の頭の整理も含めて、説明にチャレンジしてみます!
ただ、現段階では、私の咀嚼力が足りないので、全容を伝えることができません。あと、ややこしくなるので、具体的な手法は省きます。
この記事の目的は、ナラティヴ・セラピーの考え方を借りながら、私がカウンセリングを通して実現したいことを伝えるものです。
私が望むカウンセリングの形を、ナラティヴの姿勢を使うことで実現できると考えたので、取り入れています。
ナラティヴ・セラピーとは?
ナラティヴ・セラピーの特徴は、まず「ナラティヴ・セラピーとは何か?」という定義に、一筋縄に答えてくれないところです(笑)
言葉の定義に、どんな力学が発生しているのかを考えることから始まるので。私は、「言葉にとても慎重だ」という第一印象を持ちました。
ここでは、ナラティヴ・セラピーの位置づけを大きく象徴している3つの項目について、ご紹介します。
- カウンセラーの姿勢に重きを置く
- アイデンティティに取り組む
- ポスト構造主義と社会構成主義
カウンセラーの姿勢に重きを置く
印象的なのは、クライアント(相談者)の特徴や、障害、人格についての説明が一切ないこと。
たとえば、
「ネガティブ思考が強い人は、考え方の癖を修正するといいですよ」
「引きこもりの人は、小さな成功体験を重ねて徐々に社会参加しましょう」
みたいな、問題を抱えた人の特徴と、その対処方法について考えるものではないんですね。
セラピーの特徴を定義する場合に、相手の欠点や生きにくさの特徴や障害について、どこに焦点を当てたアプローチであるか、という説明をしてしまうことができるでしょう。
ところが、ナラティヴ・セラピーが伝えようとしているのは、心理療法を提供する私たちについてのことなんです。
なんらかの問題や苦悩に悩まされている人に接する、私たちの姿勢が大切な点であるとしています。
引用:ナラティヴ・セラピー・ワークショップBOOK1
相談する人、される人
人に何か相談するとは「その行為によって問題が問題となる」とも言えるんですね。
カウンセラーの存在によって、相談者が生まれるとも言えるのです。
こうして、相談する人と、される人、という構図ができると、相談する人は、その立場から話を続けることになります。
つまり、相談するに値する何かを持っている人として、自分を認識するんですね。
ナラティヴ・セラピーでは、相談する人、される人、という関係性から離れることを考えます。
目の前にいる「その人が、その人の人生の専門家である」として、その人自身に自分の人生を歩んでいける資質や能力があるのだ、という信念を持って接します。
アイデンティティに取り組む
ナラティヴ・セラピーは、会話によってアイデンティティの変化を目指します。ただし、そのアイデンティティは、さまざまな影響を受けて成り立っているという考えがベースにあります。
ナラティヴ・セラピーではどのように「人格」や「パーソナリティ」を理解していくのかというと、その人に固有で、内在し、固定的なものであるとはみなさないのです。
人とは、いろいろなことに応じて、いろいろな側面を持つことができるということ。人間って、そういう存在なのだということです。
「うちの子は、内気で、人見知りなんです」というパーソナリティがあると信じたら最後、あまり可能性を持つことができないのです。
ところが、人はいろいろなパーソナリティを持てるものだと信じることができたら、「内気で人見知り」ではないところもあるのだと思えるし、そのようなことに目を向けることができるかもしれないのです。
引用:ナラティヴ・セラピー・ワークショップBOOK1
ここで、普段の私の発信をチェックしている人は、疑問を持つかもしれません。

あれ?もって生まれた性格・気質を知ると生きやすくなるって言ってるよね?
矛盾していると思うかもしれないけど、私としては同じことを伝えたいのです。
変わる部分、変わらない部分
ナラティヴ・セラピーから少し離れますが、性格タイプについても言いたいことは同じです。
人間の内面は、固定的・一面的ではなく、多様で複雑です。もって生まれた性質をもとに、環境の影響を受けて成長していきます。そして、自分自身の扱い方を習得していくんですね。
もって生まれた性質は生涯変わらないけど、環境に適応するために変化しやすい役割性格(ペルソナ)があるんです。つまり、変わる部分と変わらない部分ですね。
ナラティヴと性格タイプで共通しているのは、「私はどのような人間か」というアイデンティティは、社会的な影響を受けながら確立されるものだ、ということです。
この影響が、どの部分に及んでいて、どう行動に反映されているのか知ることで、アイデンティティの変化を目指すのがナラティヴ・セラピーの取り組むところです。
ポスト構造主義と社会構成主義
ナラティヴ・セラピーの在り方に大きく影響している思想に、ポスト構造主義や社会構成主義があります。正直、理論のすべてを把握しているわけじゃないので、またまた説明を引用させてもらいます。
下記の説明は、構造主義について国重さんが引用したものです。
私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。
だから、私たちは自分が思っているほど、自由に、あるいは主体的にものを見ているわけではない。
引用:ナラティヴ・セラピー・ワークショップBOOK1
うん、難しいね(笑)
哲学的思想
ナラティヴ・セラピーについて学んでいると、哲学の話がたくさん出てきます。その一つが、フーコーです。
真実は存在しない、ただ真実だとする解釈があるのみ
この言葉は、ナラティヴの姿勢を表す材料になると思います。
つまり、相談に来た人が話したことは、「その人の全てである」とか「その人の人格を表している」とは考えず、何かしらの影響を受けて言葉を発しているんだと。
その人の感覚が優先される
ナラティヴ・セラピーでは、その人が、どのように体験しているのか、どう感じているのか、どう見えているのか、ということが、その人の言葉で語られることを大切にします。
内面に名前がつくと、状態を理解しやすくなると同時に、名前に当てはまらない部分は除外されがちです。
たとえば、ADHDと診断されても、ADHDの特徴だけでは説明できない部分もあるはずなのに、すべての原因に結び付けてしまうことがあります。
一般的な説明では表現されない、その人が抱く感覚が蔑ろにされてしまう。
人の言動を見て、普通とは違うと思うような状態に気づくことがあります。
その状態を追っていくと、他の人も同じような状態を持っていることに気づきます。それはどのようなものか調べることもできるでしょう。
そして、そのような状態を持つ人の例がそれなりに集まれば、そこに分類名をつけることができます。そして、分類名があることによって、他の人が同じようなものを持っていることをより見分けられるようになります。
さてこの分類名が、診断名ということになります。これは、あるものを説明上、便宜上分類したものです。
ですので、その分類名が原因を示唆するものとして扱ってはいけないのです。
引用:ナラティヴ・セラピー・ワークショップBOOK1
診断名に原因の全てを求めると、問題が発生するたびに名前を求めるようになります。
名前を採用した背景
この現象は、病名や障害名だけではありません。
「私は自分勝手だから、空気を壊してしまう」
「私は落ち込みやすいから、いつも行動するのに時間がかかる」
とか。
自分自身につけた名前と、行動の結果を結びつけることって、ついやりがちです。
ナラティヴ・セラピーでは、こうした名前を採用した背景に関心を寄せるんですね。それが真実だと採用された理由が知りたいのです。
だれかに「あなたは自分勝手ね」と言われたかもしれない。ドラマのセリフで「私自分勝手だから」というのを聞いて、覚えたかもしれない。
その人が、その現象をどう感じて、なぜ採用したのか。その人の言葉で語られることで、「私は○○である」と、当たり前になっていたアイデンティティを丁寧に拾い上げていきます。
まとめ
今回は、ナラティヴ・セラピーとは?という説明を通して、私がカウンセリングで実現したいことをまとめました。
って言っても、この記事だけで伝えきれるとは思ってません。
はじめて知った人に、なんとなく雰囲気だけでも届けられたいいなぁ、と思って書きました。間違えるのが怖くて、引用が多くなってしまったのが悔しいところ。(ビビりなんだからっ!)
最後に、まとめです。
ナラティヴ・セラピーの特徴
- カウンセラーの姿勢に重きを置く
- アイデンティティに取り組む
- 構造主義と社会構成主義
ナラティヴ・セラピーの定義や解釈は、人によって違いがあると思います。
ここで紹介したのは、NPACC(ナラティヴ実践協働研究センター)の皆さんから教えてもらったことを反映させています。
参考文献は、NPACCの立ち上げメンバーでもある、国重浩一さんの書籍です。
今後も経験を重ねながら、私なりに伝えられることを増やしていきたいなと思います。
参考文献